国宝 明王院五重塔

この塔は貞和4年(1348)住持頼秀のとき、一文勧進の少資を積んで造られたことが、伏鉢の陰刻銘からわかっています。
本塔の心柱が一層の天井で止まっており、全国的にも珍しい例です。
手法も雄大で、南北朝時代の代表的和様建築です。
また、現在全国の指定文化財塔22基のうち、法隆寺・室生寺・醍醐寺・海住山寺に次ぐ5番目の古さを誇り、中世密教寺院における現存唯一の遺例と言われています。
初層内部は絢燗豪華な密教世界が広がり、四方の壁面に描かれた真言八祖行状図、仏壇上の中尊と四天柱三十六尊を合わせた金剛界三十七尊、長押・天井などには唐草文・花鳥・飛天などが極彩色で描かれ、さながら浄土の世界のようです。
なお、表に五大虚空蔵菩薩像図、裏に兜率天曼荼羅図を描いていた仏壇の来迎図は、明治年間皇室に献上され、現在は東京国立博物館に保管されています。


五重塔初層内部
中央仏壇上には大日如来(実は弥勒菩薩)と不動・愛染両明王、これを囲む四天柱には金剛界の諸仏諸菩薩、天井長押には供養の飛天や楽器、脇間には真言八祖行状図といった絢燗豪華な密教世界が広がっている。
四天柱は向かって左手前が東柱、以下時計回りに南・西・北柱となり、各柱に三列三段=九尊ずつ合計三十六尊が描かれており、仏壇上の中尊と合わせて、金剛界曼荼羅の中心をなす金剛界三十七尊を形成する。